お問い合わせ

 

2023.05.30

  • 右脳で考える高分子化学

Vol.02 高分子の接着(前編)-ぬれ性-

右脳で考える高分子化学

さて、シリーズ第2回目、高分子の「接着」について右脳を使って直感的に理解いただきます。モノが接着剤でくっつく理由、ポリエチレンは接着剤でくっつきにくい。接着とは何なのか。まずは液滴(接着剤)と固形物(被接着物)の境い目はどうなっているのかについて大枠を高分子化学のゼミ学生とともに理解しましょう。

液滴の形ってなぜ丸かったり、広がったりするんですか?

  • 昨日のお昼、カフェでアイスコーヒー飲んでて、グラスを持ち上げたらコースターもくっ付いてきて、まあまあの高さで離れて、、、テーブルに当たって跳ねて、床をコロコロ10mくらい転がって、まわりのお客さんから大笑いされたんですよー。恥ずかしくってー。

    イラストA(縮小版).jpg

  • なぜくっついたんですか?

  • なぜって、グラスの水滴ですよー。冷たかったら水滴つくでしょ。水でくっついたんですよ。教授もたまにあるでしょって、あれっ、なんで水でくっつくんだろ?

  • 表面がぬれる。それが「接着」の第一段階かつ必要な要件です。ですから接着剤は必ず液状です。水はグラスとコースターの表面によくぬれたのでくっつきました。よくぬれると接着力が高まります。接着剤は固まりますが水は液状のままですのですぐはがれました。接着する一歩手前までいっていたことになります。

    イラストB(縮小版).jpg

  • 表面がよくぬれるってどういうことですか?水滴が多かったんですか?

  • ぬれた、というのは接着面に液滴を置いた時のひろがりの程度です。ぬれ性といいます。ガラスの上に水滴を置くと半円から少し広がった状態になります。これを、よくぬれた、といいます。一方ポリエチレンの板の上に置くと弾いて玉のようになります。これを、ぬれが悪い、といいます。

    イラストC(縮小版).jpg

  • 液滴の形って。意外に感覚的ですねー。ラフで微妙だなー。

  • いろいろな方法で液滴の接線と接着面のなす角度(接触角)を測定し、ぬれがいい悪いを数値化しています。角度が小さい方がよく広がり、ぬれがいいことになります。

    イラストD(縮小版).jpg

  • やっぱり実践的できっちりした測定方法だったんですね。

  • 接着剤に限らず、塗料や印刷インキなどモノの表面に関係するさまざまな研究開発に使われています。

(まとめ)

ぬれ性は接着の強さに大きな影響を及ぼします。ぬれ性=液滴を固形物の上に置いた時の「液滴の形状」=接触角θで表されます。

ぬれ性は、液滴の表面の性質とモノの表面の性質によって決まります。液滴の表面と、液滴の表面のごく内側では、気体に接しているかどうかという点で全く違います。表面のごく内側は液滴の分子が引張り合うことでつり合って楽ですが、表面は気体部分から引張られないので苦痛なため、丸まって表面の面積を減らそうとします(表面張力)。固形物も同じく気体と接している表面にも表面張力がありますが、固いので丸まれず、液滴などの何かを引っ張ってきて表面にくっつけてフタをするかのようにして楽になろうとします。このように固形物の上に液滴を置いた時、丸まろうとしたり、フタをしたりする力のバランスでぬれ性が決まります。