2025.01.10
- 実践!フィルム編
Vol.02 プラスチックフィルムとは? (ゆっくり解説動画有)
右脳で考える高分子化学
プラスチックフィルムは最も身近な高分子材料のひとつで、JIS規格では「厚さが0.25mm未満のプラスチックの膜状のもの」と定義されています。決まりはありませんがしなっとして柔らかいイメージもあります。プラスチックフィルムとは何か?製造方法、原材料と環境面に焦点を当てて大枠を高分子化学のゼミ学生とともに理解しましょう。
プラスチックフィルムって何ですか?
=プラスチックフィルムの製造方法=
教授、プラスチックフィルムってどうやって作るんですか?あんな薄いのに厚みが一定の成型品って作るのも難しそう。やっぱりクレープみたいにつくるのかな?
押出成形で作ります。
おしだし、せい、け、い?
押出成形は、固形のプラスチック原料を押出機に入れて液状にして定量的に金型の中に入れ、金型の出口の形に成形した後冷却して固形にすることで、連続して同じ断面の成型品を作る成型方法です。円形の金型を使用してチューブ状に押出して折りたたんで巻取るのがインフレーション成型、一文字の金型を使用して1枚のシート状に押出して巻取るのがキャスト成型です。
それぞれの成型方法で得られるフィルムの特徴は何ですか?使い分けというか・・・。
インフレーション成型は円形に押出すので直線に押出すキャスト成形よりコンパクトな成形機でより幅の広いより大量のフィルムを押出せます。最大の特徴はチューブ状に成型するため内面がクリーンなフィルムが得られるので、点滴バッグのような医療用や食品包装フィルムに使用されます。
金型が丸いと確かに成形機がコンパクトですね。内面は外気に接触しないのでクリーンなのも納得です。
キャスト成型は一般的にインフレーション成型に比べて偏肉(フィルムの厚みのバラツキ)精度が高いのが特徴です。また溶融状態のフィルムを急冷する成形法で、厚みのあるフィルムが押出せますし、透明性に優れるなど光学的に優れたフィルムが得られます。
厚みが厚いフィルムでも急冷できて、厚くて透明なフィルムができるんですね。これも納得です。
=プラスチックフィルムの種類=
プラスチックフィルムの原料って原油から作るんですよね。想像がつきません。
油田から採掘された原油はさまざまな有機分子の混合物です。この原油を石油精製工場で沸点の差を利用して、沸点が35-180℃のナフサという液体を取り出します(蒸留)。このナフサを分解炉で熱分解していったん小さな分子にして、精製するとプラスチックだけではなくほとんどの石油化学製品のもととなる、エチレン、プロピレン、ブタジエン、芳香族炭化水素(ベンゼン、トルエン、キシレン)が得られます。これを原料としてプラスチック原料を作ります。
プラスチックフィルムはやっぱり原油からできるんですね。
=プラスチックフィルムと環境=
原油は限られた資源・・・。プラスチックフィルムを作るのはやっぱり環境によくないんでしょうか?
数字でみると、日本で消費される原油のうち、プラスチックに使われる割合は約3%弱、そのうち約半分がプラスチックフィルムです。原油のほとんどは燃料や発電に使われています。プラスチック以外の97%の消費へのアプローチがより効果的です。
思ってたより少なかったです。でもできるだけ使わない方が・・・。
現代社会ですべて天然素材を加工して生活することは現実的ではありません。プラスチックの医療用品はコロナのパンデミック時に必要不可欠な材料で、存在しないともっと多くの人命が失われていました。食品真空包装は食品の賞味期限を延長するので食品ロスを減らします。日本の食品ロスは2022年で472万トン、処理にも燃料が必要なので、食品用プラスチックフィルムは食品の生産にかかる資源や燃料、廃棄にかかる燃料をダブルで減らします。またガラスや金属からプラスチックにすることで軽量化が図れ、輸送時の燃料が減らせます。
なるほどー。プラスチックフィルムを使うことが、かえって環境に良いこともあるんですねー。
プラスチック以外にも原油は医薬品をはじめ多くの石油化学製品に使われて、私たちの生活を支えています。プラスチックはバランスよくうまく使って現代社会と共存していくことが重要です。
後ろめたいというかぼんやりとした不安は解消しました。これからもプラスチックや高分子の研究を通じてサステナブル社会の構築に貢献します!
- まとめ
・ほとんどのプラスチックフィルムは押出成形で作られていて、フィルムの用途や機能に応じてインフレーション成型かキャスト成型を選択します。
・プラスチックフィルムの原料は原油です。原油を蒸留して「ナフサ」を取り出して熱分解し、エチレン、プロピレン、ブタジエン、芳香族炭化水素といった基礎原料を生産します。これらを組み合わせてプラスチックフィルムをはじめほとんどの石油化学製品が生産されています。この一連のプロセスは「石油化学工業」として確立されていて、サステナブルな社会の実現に向けて活発な研究開発が行われています。
・日本の原油消費量の内、プラスチックに使用される割合は3%。さらに環境への影響を減らすためにリサイクル、バイオマス原料や生分解性プラスチックなどの研究開発が行われています。プラスチックは原油を消費しますが、一方でサステナブルな社会の形成には必要不可欠なものでもあり、プラスチックのいい面と悪い面両方に科学的にアプローチして研究開発をすすめ、バランスよく共存することが重要と考えます。
四国化工は共押出多層フィルムのリーディングカンパニーです。これまで食品、医療や工業分野などでオリジナルの機能性プラスチックフィルムを開発してまいりました。プラスチックフィルムに関するご相談は四国化工にお問い合わせください。
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