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2024.03.11

  • 共押出多層フィルム製造現場

Vol.06 共押出の基礎 食品包装フィルム CANS

密着24時!共押出多層フィルム製造現場

さて、第6回目、生まれも育ちも香川県東かがわ市の優しい現場リーダーが20年の経験を基に指導してくれます。今回は四国化工の主力商品である食品包装フィルムCANSの基本構成やそれぞれの特徴について開発された順に、配属された新入社員と共に学んでいきましょう。

CANSの進化

  • お疲れ様です。今日は四国化工の食品包装用共押出多層フィルムであるCANSの基本構成について開発された順を追って説明します。進化の過程がわかりますよ。

  • 進化とはまた大げさですね。

  • 先輩たちに敬意を払いあえて進化とします。いまやたくさんの種類があるCANSですが、軸となるのは開発された順に、

    NY/PE ➡ PE/NY/PE ➡ PBT/NY/PE ➡ PBT/NY/EVOH/NY/PE 4種類です。

  • 軸はたった4種類?!では1つずつお願いします。

  • 日本の共押出多層フィルムの夜明け。2層機を導入した大先輩たちはたちまち共押出多層フィルムというユニークな製法のとりことなって、研究開発を始めました。

  • 2層機というのもあるのですか。3からだと思っていました。

  • NY/PE

    2層機の時代は私も入社前です。食品用袋の販売開始は3層機で作ったものでした。NY/PE。業界でナイロンポリと呼ばれます(四国化工のBタイプ)。これはNY/接着/PEの3層構成です。ナイロンのバリア性を利用して食品の真空包装ができるようになりました。

  • 以前教わった基本的な原料が全て使われているのですね。

  • PE/NY/PE

    そうです。以前教えた「添加剤」も入っていますよ。次に開発されたのがPE/NY/PE。業界でポリナイロンポリと呼ばれます。PE/接着/NY/接着/PE(四国化工のAタイプ)の5層タイプ。実は強度の胆のNYではあるのですが、吸湿した状態で冷凍されるともろくなる性質があり、NY層が吸湿しないようにPEで保護する設計です。

  • 無敵と思われたNYにも弱点があったのですね。

  • PBT/NY/PE

    すべてのものに弱点はあります。そして次に生まれるのが、PBT/接着/NY/接着/PEの、同じく5層タイプの構成です。世界初の発明で特許取得製品。一般名はなく、業界でも「CS-H」と呼ばれ、現在でも四国化工の主力製品です。PBTとは、あのPETによく似た樹脂で、NY同等の耐熱性寸法安定性に優れた樹脂となっています。

  • 最外層に耐熱性を持っているNYを使う発想は無かったのでしょうか?

  • それもあったのですが、袋にした時の開口部のカールを抑制することが難しく、カールを防ぐ目的でPBTを選定しました。またPBTはPET同様に保香性(香りを逃がさない)があり、フラットで光沢のある美しいフィルムに仕上げることができました。以前教えたように、最内層と最外層の耐熱性の差が大きいので製袋加工性も飛躍的に向上しました。

  • ナイロンポリの弱点である冷凍流通、ポリナイロンポリの弱点である製袋加工性を克服し、更にカールの無い光沢あるフィルムに仕上がったのですね、PBTは大きいポイントのようですね。

  • PBT/NY/EVOH/NY/PE

    そうですね、当時PBTを多層共押出するメーカーはなく画期的でした。いまではCANSの7割にはPBTを使用しています。最後は、酸素バリア性に優れるEVOH樹脂を取り入れたPBT/接着/NY/EVOH/NY/接着/PEの7層品です。業界でハイバリアと呼ばれます(四国化工のバリア7)。共押出のハイバリアは画期的で、かつ保香性、耐熱性、寸法安定性、耐ピンホール性、冷凍流通に強く、重ねシールができるバリア7は、ほんとうに、画期的です。

  • pic2.png層数も増えて、樹脂種も増えてどんどん進化する様子が分かります。

  • ええ、それでも基礎となるナイロンポリの思想はずっとどのフィルムにも受け継がれています。内層側の3層を見ればそれが分かりますね。

  • あ!本当ですね。基礎を踏まえて進化しているという訳ですね。

  • 温故知新。これからも大先輩の発明を大切にしながら、画期的な発明品を世に送り出しましょう。

ー 今日の研修レポート ー

CANSは3層の汎用多層フィルムから進化していた。

課題を解決する度に新グレードが誕生、材料変化や層数が増加した。

基本設計となる、NY/接着/PEの構成は維持している。

 他のCANS製品:

共押出多層フィルム製法のメリットは、樹脂からワンステップで多層フィルムが得られること。このため特定の層の厚みを増やしたり、種類を変えたり、添加剤を入れたりと、設計がフレキシブル。CS-H からだけでも様々な派生製品が作られている。

PBT/NY/PECS-U) ←PBT/NY/PECS-H

CS-Hのシーラントを低融点のPE変えることで「重ねシール」性を向上させた袋。主にチルド流通の生肉に使われている。

 PBT/NYNY比率高い!)/PEVB) ←PBT/NY/PECS-H

CS-HのNY比率を上げた袋。強度の胆のNYが増えるので耐突刺しピンホール性が上がる。骨付き肉、甲殻類や貝といったとがった内容物の包装に使用されている。

 PBT/NY/PE(内層に帯電防止剤!)(ASB) ←PBT/NY/PECS-H

CS-Hのシーラントに帯電防止剤を添加した袋。静電気で粉ものが袋に残るのを防ぐため、主に小麦粉やスパイスなど粉もの用の袋に使用されている。

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