2024.07.11
- 実践!フィルム編
Vol.01 プラスチック袋のピンホールの原因と対策 (ゆっくり解説動画有)
右脳で考える「高分子化学」実践!フィルム編
これまで高分子そのものの性質や製法についての様々なエピソードを紹介してきましたが、今回は少しスピンオフして、実際身の回りで使われているプラスチックフィルムについて科学的にアプローチするエピソードです。まずはプラスチック袋のピンホールの原因と対策を解説します。ピンホールとは容器に開いた目に見えるか見えないか程度の小さな穴や欠陥を指します。ピンホールの発生原因とメカニズム、対策について大枠を高分子化学のゼミ学生とともに理解しましょう。
プラスチック袋のピンホールを止める方法はありますか?
京都のおばさんは食品工場の工場長なんですが、袋に小さな穴が開いて、食品が変色したり、液漏れして他の製品を汚したりするので困ってるそうなんです。昨日も、『高分子化学専攻の大学生でしょ?何かいい解決方法を知らないの?』って電話がかかってきたんで、とりあえず、分厚い袋にしてみたらって言ったんですが・・・。
それはプラスチックフィルムのピンホールという欠陥です。通常、製造過程や輸送中、使用中に外部や内容物からの物理的な原因によって発生します。
そう、そのピンホール!どうやったらピンホールを止められますか?
製品の設計段階でピンホールのリスクを低減しておくことが重要ですが、既に問題が起こっている場合、科学的なアプローチで原因を特定する応急対応が最優先です。原因がわからないと問題解決に時間がかかります。まずはどこで発生しているか、どんな種類のピンホールなのかなどデータを収集します。
ある程度の見当はつきませんか?見るポイントとか。
製造過程で発生している場合は、ライン上に袋に負荷がかかる場所がないか、引っかかる場所とがった場所がないかなどを確認します。ストッキングなどでラインをなでて、やぶれないかは実践的で簡易な検証方法です。そして異常箇所を改善します。
製造過程以降で発生している場合は、ピンホールの種類によって適切な容器包装の選定や変更が非常に重要です。
ピンホールにも種類があるんですか?
ピンホールはおおきく3つに分類できます。突刺し、摩擦と冷凍です。
どうやって見分けるんですか?
発生した状況を確認し、顕微鏡でピンホールの形状を観察したりすることで推定します。
そもそも厚みを厚くする以外のピンホール対策ってあるんですか?
厚みを厚くするのも有効ですが、ピンホールの発生率は厚み以外に、袋の素材や製造方法に大きく左右されます。
素材や製造方法・・・、で・・・?
「突刺しピンホール」は、ナイロン層の使用、ナイロン層の厚みを厚くすることが効果的です。またとがった内容物の場合、でこぼこに沿って伸縮できる共押出多層フィルム製法でつくった多層フィルムが効果的です。また共押出多層フィルム製法は全体の厚みを上げずに、突刺しに強いナイロン層のみを厚くできるなどフレキシブルな設計が可能です。
確かにとがったものに沿って伸びると穴が開きませんねー。
「摩擦ピンホール」はダンボール表面と、真空包装したときの袋の折れジワの先端がこすれ、摩擦熱で先端が溶けることで発生します。ダンボールで手を切った経験はありませんか?ミクロの眼で見るとやすりと同じようなものですので、袋との接触を避けるためダンボールの上にプラスチックフィルムを敷くのが効果的です。
でも手間もかかるしもったいないですよね。
そもそも袋が折れたときシワになったり、とがったりしなければ、摩擦する部分の圧力が低いので穴が開きません。共押出多層フィルム製法で作った柔軟な袋を使用することで余分なコストや工数がかからず、摩擦ピンホールの発生を防止することができます。
袋が固くてパリパリだと、少し折れただけでとがった部分ができますもんね。それが起こらないようなやわらかい素材にすればいいんですね。
最後に「冷凍」。プラスチックは温度が低いほど固く、脆くなる性質があります。特にナイロンは親水性高分子で、常温では適度に水分を保持して柔らかいですが、冷凍状態が長時間続くと、水分がなくなり(水の昇華)、極端に脆くなります。このため輸送時の揺れなど少しの負荷で小さい裂け目、つまりピンホールが発生します。このため共押出多層フィルム製法で、ナイロン層をPBT(ポリブチレンテレフタレート)層でカバーすると、冷凍状態でもナイロンが水分を保持できるので極端に脆くならず、冷凍ピンホールに効果的です。
ありがとうございます!おばさんに電話してきます!というか教授、おばさんの会社に転職しませんか?
- (まとめ)
プラスチック袋のピンホールの発生は、プラスチックの素材や製造方法を変えることで減らすことができます。その中でも共押出多層フィルムはいろいろなピンホール防止に有効な素材をワンステップで組み合わせた、伸びがありしなやかなフィルムで、ピンホール防止に絶大な効果があります。
四国化工は共押出多層フィルムのリーディングカンパニーです。これまで多くのお客様からピンホールに関するご相談をいただき、原因の特定と問題解決を通じて、ピンホール対策の技術を積み重ねてきました。食品の容器包装だけでなく、医療分野や工業分野など、あらゆる容器包装のピンホールでお困りの方はぜひ四国化工にご相談ください。
Contact