2023.09.21
- 右脳で考える高分子化学
Vol.04 高分子のガラス転移点(Tg)(ゆっくり解説動画有)
右脳で考える「高分子化学」
低分子は、冷やすと固体、温めると液体になります。例えば水。0℃から100℃までは水の状態ですが、冷やしていくときっかり0℃でカチカチの氷になります(1気圧の場合)。高分子の場合はどうでしょうか?高分子のガラス転移について大枠を高分子化学のゼミ学生とともに理解しましょう。
高分子を冷やしていくとどうなるんですか?
教授、水を冷やしていくと固体の氷になるじゃないですか。あつあつの液状や、ふにゃふにゃの柔らかい高分子を冷やしていくとやっぱり固体になるんですよね?
ガラス状態になります。
ガラス?って、あの窓ガラス。ガラス瓶。ビー玉、の、です・・・か?緊張するなー。
ガラスとは液体分子が冷えてランダムに固まった状態(アモルファス)のことをいいます。その窓ガラスとかも液体のガラスを冷やして固めた無機高分子ガラスです。プラスチック成型品のような有機高分子も冷やすとガラス状態になります。一方で液体を冷やして分子が規則正しく配列して固まった状態(結晶)が固体です。
そうか、高分子はガラスっていう状態になるんですね。でも結局どちらも固体ですよねー。どちらも固いし。
いろいろな面でガラスと固体は違います。
えー。
決定的な違いは、液体から固体になるときは融点で不連続に状態が変化するのに対して(一次相転移)、液体からガラスになるときはある温度付近でだらだらと状態が変化することです。その温度付近をガラス転移点(Tg)といいます。
また液体はある程度自由に動けますが、固体は自由に動けません。液体は自由に動ける力と分子間で引き合う力が釣り合っています。固体は引き合う力が勝り、分子が規則正しく配列して動けなくなった状態です。ガラスは高分子がランダムに固まったものなので自由に動ける構造です。液体です。
えー、ガラスやプラスチックって熱くて溶けてるときは液体っぽいですけど固まっても液体なのか-。固体やガラスはなんで冷やすと固まるんですか?
電気力です。分子間で引き合っています。
やっぱりなー。なんか高分子化学がわかってきました。
高分子はガラス転移点(Tg)付近で高分子の固さや体積、比熱などが著しく変化しますが、これがガラス転移という現象なのか、単に冷やして高分子が動けなくなっただけの状態なのかは解っていません。
ゼリーを作るとき液体のゼリーを型に入れて冷蔵庫で冷やすと固まるじゃないですか。あれもガラ・・・ス?
ガラスです。チョコも飴もです。
やっぱりねー。意外な方が当たりですね。
- (まとめ)
ガラス転移は高分子特有の現象で、Tg以下の温度領域では高分子の主鎖(骨格部分)が自由に動かなくなります。同じ高分子でも、分子量(高分子の長さ)が大きくなるとTgも高くなります。また主鎖や側鎖(主鎖に結合している短い部分)種類によっても大きく変動します。Tgが高いほど高温でも変形しないのでTgは高分子の耐熱性の目安になります。
TgはDSCという測定法で測るのが一般的です。基準物質とサンプルを同時にゆっくりと昇温/降温して吸熱/発熱を測定します。
四国化工の共押出多層フィルムはポリエチレンやナイロン樹脂などからできているので、Tgを測定すると複数個現れます。
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