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2023.12.15

  • 右脳で考える高分子化学

Vol.06 高分子の重合

右脳で考える「高分子化学」

これまでは高分子の性質について右脳で考えてきましたが、いったん高分子の作り方についてのストーリーを挿みます(高分子合成化学)。高分子(ポリマー)はモノマーと呼ばれる低分子が化学反応してつながることで作られます。どうやってつながっていくのか・・・。大枠を高分子化学のゼミ学生とともに理解しましょう。

高分子はどうやってつながるんですか?

  • これまで高分子の性質について教わりましたが、今日は高分子のつくり方を教えていただけるとか。

  • 高分子は英語でポリマー。モノマーという低分子が化学反応してつながってつくられます。これを重合といいます。「ポリ」はたくさん、「モノ」は1つという意味です。イメージ的にこういう図になります。

    イラストA.PNG

  • わかりやすいですねー。モノマー分子は仲良くならんで、お互い両手を出すようにしてつながって一気に高分子になるんですねー。

  • モノマーからポリマーができる、ということを示した図で、生体高分子で一部こういう重合の進み方がありますが、工業的な重合の進み方は違うんです。重合は大きく2つに分類されます。1つは連鎖重合(chain)。主にビニル基を持つモノマーの重合です。重合を開始剤する分子の反応点がモノマーを攻撃、そのモノマーに同じ形の反応点ができて、それが次のモノマーを攻撃して同じ反応点ができて・・・、これを繰り返して分子が長くなっていきます。

    イラストB.PNG

  • 地道に1つずつつながって高分子になるんですね。串だんごをつくるイメージだ。

  • もうひとつが逐次重合step)。分子の両端に反応基があるモノマ-の重合です。モノマーが反応して2―3個つながったポリマーになり、そのポリマーが他のポリマーとつながって10個くらいつながったポリマーになって・・・、これを繰り返して分子が長くなっていきます。

    イラストC.png

  • 重合が進むにつれて長いポリマーと長いポリマーが反応してもっと長いポリマーになって・・・。最後の方に急激に長くなりますね。じゃんけん列車のイメージ。1本のポリマーになるまで重合は続くんですか?

  • 高分子の長さは、高分子に必要な性質によって重合条件で変えます。また化学反応は反応点同士が衝突する必要があります。ポリマーが全体的に長くなるほど反応点が減り、衝突の確率が極端に落ちて重合が進みません。残念ですが1本になりません。

(まとめ)

モノマーを擬人化して手をつないでポリマーになる図は、高分子化学の黎明期に日本の機能性高分子研究をけん引した、大阪大学の竹本喜一教授が考案されたといわれています。

 高分子の長さは一般的に分子量(「炭素12」の質量を12とした時の相対質量)で表されます。低分子が大きいもので分子量が数百に対して、分子量10,000以上くらいのものが高分子と呼ばれます。高分子の分子量は重合の条件を変えることでコントロールできます。

 重合して分子量を測定すると、同じ分子量の高分子ができているわけではなく、長さの違う高分子の混合物になっていることがわかります。どの程度のばらつきかを示す分布を分子量分布といいます。

連鎖重合の例は、ポリエチレン(包装材料やポリバケツ)、ポリスチレン(発泡スチロールやカップめん容器)が挙げられます。逐次重合の例は、ポリエステル(PETボトルやポリエステル繊維)、ポリウレタン(ソファーのクッションや合成皮革)が挙げられます。