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2024.01.31

  • 右脳で考える高分子化学

Vol.07 高分子の機械的性質

右脳で考える「高分子化学」

高分子は加工しやすい、軽い、その割には高強度であることから、さまざまな成型品に使用されています。例えば自動車。エンジンカバーをはじめ自動車部品の多くは金属からプラスチックに置き換えられ、軽量化、省エネやコストカットにつながっています。機械的性質とは材料に外部から力を加えたときにどうなるかを示す特性です。大枠を高分子化学のゼミ学生とともに理解しましょう。

高分子を押したり引張ったりするとどうなるんですか?

  • 昨日スーパーで2Lのペットボトルのお茶を6本買ってレジ袋に詰め込んで帰る途中、持ち手がちぎれて落としそうになったんですよ。

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  • その現象を高分子の破壊といいます。レジ袋の材質や厚み、詰めたものの重さ、詰め込んだ時キズが入った/入ってない、持ち手を上に引き上げる速さ、周りの気温・・・、様々な要因が絡み合って破壊したりしなかったりします。

    まずはお茶の重さで持ち手が伸びるところを考えていきます。

  • 重いほどよく伸びるような気がしますけど・・・。

  • 正解です。お茶を入れていくと持ち手が伸びますが、それに応じて元に戻ろうとする力が働きます(応力)。その力を縦軸に、持ち手の伸びた長さ(ひずみ)をプロットするとイメージしやすいです。

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  • ほんとだー。

  • グラフの伸び初めの部分は直線で、戻る力と伸びた長さは比例し、お茶を全部取り出すと元の長さに戻ります(弾性変形)。固い高分子だとお茶をたくさん入れてもあまり伸びませんが、柔らかいとよく伸びます。この直線の傾きは高分子の固さを表していて、弾性率ヤング率)といいます。

  • 確かに固いと傾きが大きくなりますね。イメージ通りです。

  • ある程度本数を詰めると戻る力と伸びが比例しなくなります。ここまで伸びるとお茶を全部取り出しても伸びたままになって元の形に戻りません(塑性変形)。このポイントを降伏点といいます。降伏点を超えて伸びても元に戻ろうとする力がかかりにくくなるのが一般的です。さらに伸ばしていくと最終的に破壊します。

    高分子は分子間で電気的に結合していて、降伏点までは変形してもその状態を維持しますが、降伏点を超えると分子間の結合が切れ、ずれるためです。

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  • 袋(M)じゃなく袋(L)にしとけばよかった・・・。

(まとめ)

応力(Stress)と変形量(Strain)のグラフは応力-ひずみ曲線S-Sカーブと呼ばれ、高分子材料に限らず、金属をはじめさまざまな材料の特性の評価に使われます。固いのか柔らかいのか?伸びるのか脆いのか?が一目でわかります。

また例えば材料の厚みが厚いと同じ荷重をかけても変形量は小さくなるので、他の材料と比べるためには荷重を試料の断面積で割り算して圧力の単位で応力を計算します。

 材料を上下に引張る試験が引張試験です。その最大応力を引張強さといいます。逆に上下から押す試験は圧縮試験といい、最大応力は圧縮強さです。高分子の応力は変形させる速さに依存し、一般的に早いほど強さが強くなります。

 高分子は金属に比べて弾性(変形が大きくても元に戻る。反発する。例えばゴム。)に富みます。これは金属が結晶なのに対して高分子が非晶性(電気的にランダムに固まっている状態)のためです。

 機械的性質の応力は大きく3種類、引張り応力、その逆の圧縮応力と材料をずらすときの応力のせん断応力があり、材料を変形させるときにそれぞれの応力が混ざり合って元に戻ろうとします。

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